戌年にぴったりかと思い手にとった。もちろんNIKEの創業者Phil Knightの自伝だということは知っていたし興味があったからだけれども、1〜2ページ読んで「これは好きな本だ」と直感的に感じてさっそく購入して読み始めると、まあ面白いこと。
1962〜1980のPhil Knightの自伝で、オニツカタイガーを扱うほんの小さなブルーリボンという会社を起こし最終的にはNIKEとして大成功して株式公開するまでのサクセスストーリーということになるが、起業家の直面する多くの課題、特に金策についての苦悩がヒシヒシと伝わってくる作品だ。
前書きにある以下の文章は「走る」ことの本質を的確に捉えていて、すーっと深く納得できるものだった。そうか彼は「走る」ことからNIKEに至ったのかと。
私は走ることが好きだが、馬鹿げていると言えばこれほど馬鹿げたものはないだろう。ハードだし、苦痛やリスクを伴う。見返りは少ないし、何も保障されない。楕円形のトラックや誰もいない道路を走ったりしても、目的地は存在しない。少なくともその努力に報いるものはない。走る行為そのものがゴールであり、ゴールラインなどない。それを決めるのは自分自身だ。走る行為から得られる喜びや見返りは、すべて自分の中に見出ださなければならない。すべては自分の中でそれらをどう作り、どう自らに納得させるか、なのだ。
読んだ後に力が湧いてくる、そんな作品だった。蔵書に加えるべき本に出会えた良い年の初めだった。